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あったかレポート

バリアフリー旅行記

全国介護者支援協議会には、毎日介護に悩む大勢の方から電話・ファックス・メールなどでの質問が寄せられています。
その中の1人に、今回ご紹介するHさんもいらっしゃいました。
バリアフリー旅行について、ホテルや車の手配など旅行をする上での事前準備についてのご質問でした。
そのHさんからバリアフリー旅行の旅日記が寄せられました。
今回Hさんの許可を頂いて掲載いたします。皆様のバリアフリー旅行の参考にどうぞ。

『1泊2日、バリアフリー勝浦・鴨川の旅』

【参加者】
・90歳の叔母(要介護2。7人兄弟である母の1番上の姉、私(Hさん)が小さい頃は、おばあちゃん代わりに遊んでもらった)
・75歳の母(障害者手帳所持。足にギブス使用)
・私(Hさん)
・妹夫婦(妹+旦那様52才)とひとり娘(小学校3年生/姪っ子)


◎何年ぶりかの家族旅行

「ばあばを連れて、皆で旅行に行こうよ」
言い出したのは妹でした。
「ばあば」は、母と15歳年が離れた一番上のお姉さん。
7人兄弟で下から2番目の母は、ばあばをお母さん代わりにして育ったそうです。
私の祖母は遠く離れた九州で、私が小さい時に他界してしまったので、私と妹にはお婆ちゃん代わりだった叔母さん。
ずっと「ばあば」と呼んで一緒に住んでいましたが、数年前からめっきり足腰が弱くなって、老人ホームに入所しています。
母自身がギブスをしないと立っていられないほど足が曲がった状態になってきているので、家族全員で旅行に行ける機会はこれで最後かな?という漠然とした思いがあるのは確かでした。

◎1日目/AM9:00
妹家族は前日に泊まりに来てスタンバイしつつ、9:00に出発!
近所のレンタカー会社で福祉車両をレンタル。予約していたのは7人乗りのワゴン「サイドリフトアップシート車」
姪っ子が「私がスイッチの係ね!」と立候補。リモコンを握りしめ大喜び。椅子が自動で動くのが面白いらしいです。
叔母さん(ばあば)が乗り降りした後は、必ず自分でも乗ってみないと気がすまない(笑)。
料金は24時間+6時間で約3万円弱。
同乗する母親(ギブス使用・足が悪い)の障害者手帳提示で10%値引きになり、加えて非課税でした。ありがたいです。

◎AM10:30
有料老人ホームから「ばあば」をピックアップ。
一泊の旅行だから、結構準備が必要でした。「保険証持った?お薬持った?ハンカチとティッシュは?」と指差し確認を実行(笑)。
高速道路+有料道路をドライブ!
運転手は妹。
千葉市から房総半島の中央部を横切って鴨川へと至る約2時間弱のドライブ。
周りは緑の景色。
ばあばと母がトイレの件をひどく気にしていましたが、千葉〜鴨川程度ならば、障害者用トイレが充実している道の駅をこまめに利用する事で解決できて、トイレタイムも安心でした。

◎PM12:00
鴨川までの途中、道の駅で昼食。メニューはカレーやラーメンなど。名産の魚介類は夜のお楽しみです。

◎PM1:00
鴨川シーワールドに到着。
施設全体がバリアフリー化されていて、多くの施設・展示が車いすに乗ったまま見られるのはとてもありがたいことです。
時間の都合で見る事ができたのはイルカのショーとシャチのショー、2つだけ。イルカショーではバンドウイルカとカマイルカが可愛らしくてよかったです。どちらのショーでも前に障害物がない位置に車いす席が用意されていて、これもありがたい配慮でした。
千葉県に住んでいながら、何十年ぶりかで行ったシーワールド。
シャチは絶滅危惧種。数がなかなか増えないらしい。
鴨川シーワールドは、日本で唯一シャチの繁殖に成功している水族館だそうです。貴重な存在を見せていただきました。
「ばあば」は長崎出身で、海を跳ねるイルカは見たことがあるけれど、シャチは初めてだそうです。その大きさと迫力にビックリ。大感激していました。
その後、一息入れてから、本日宿泊予定のかんぽの宿「勝浦」へ向かって移動。

◎PM3:30
かんぽの宿「勝浦」到着、さっそくチェックイン。
案内されたお部屋はオーシャンビュー。
夕焼けは見えなかったけど、山の上から見下ろす海がとても綺麗。
遠くを船が通るのが見えました。
バリアフリー対応の洋室で、ベッドが電動リクライニング。
トイレや部屋付きのお風呂は広くて手すり付き。これも嬉しい。
ただ、トイレ前に1cmくらいの溝が出来てしまっていました。
たぶんリフォームか何らかの事情で陥没してしまったのかな?という程度のものだけれど、ひとりでトイレに行こうと試みていた90歳のばあばには大きな溝です。
車いすを押してあげれば何でもないのだけれど、なかなか考えさせられました。
他は設備的な問題もなく、とてもスムーズでした。

◎PM6:00
夕食は車いすでも楽に移動できるレストランで。
姪っ子が先にエレベーターへ入って「開く」ボタンを押していてくれる。小さな心遣いがありがたいです。幼少期に人に優しくする経験は大事かもしれない、としみじみ思います。
お待ちかねの夕食。
自他共に認める食いしん坊なばあば。調理長おまかせプランという豪華なコースをチョイス。
(大奮発です。正直、この次がいつになるかは分らないからね。)
メニューは
・煮魚
・さざえのつぼ焼き
・刺身(マグロ・伊勢海老・ホタテ・あわび・とこぶし等など)
・アナゴの天ぷら
・カンパチ など
10品くらいあったかも。
老人ホームではなかなか食べられないご馳走を味わって、いい思い出になると嬉しそうなばあばでした。

◎PM8:00
入浴タイム。女性陣で大浴場に向かう。
お風呂専用の車いす(プラスチックで座席に穴が開いている)に乗り換えて洗い場まで。
ばあばは背中以外は自分で洗えるとのこと。
自分でやろうという意欲があるのは素晴らしいです。
綺麗にお湯で流したら、浴槽の縁まで移動。あとは車いすを降りて手すりを伝って自力で入浴。
肩まで浸かれてよかったよかったと、介助サイドは胸をなでおろしましたが、「お湯がもうちょっと熱かったら良かったなぁ」と贅沢を言うばあばでした。

◎2日目/AM9:00
ご飯を食べてチェックアウトしてから、お土産購入のため市場へ。
妹の旦那様と姪っ子は道沿いに広がる海岸を砂浜まで降りて、波打ち際を楽しみに行きました。
妹夫婦が暮らす長野県は海がないから、できれば海岸まで降りてみたかったようです。
ばあばも一旦外へ降りたものの、車いすでは砂浜はOUT。けれど、磯の香りで十分満足そうでした。

市場では枇杷ゼリーや房総の名品を買い込んで、ふたたび2時間ほどのドライブで千葉に到着。
老人ホームへ向い、ばあばを降ろして、しばしの別れ。
いきなり美味しいものをたくさん食べたので、お腹がびっくりしてしまわないかと心配でしたが、本人は全く気にしていない模様。
終始ニコニコ顔でとても嬉しそう。元気に手を振っていました。
部屋まで車いすを押して挨拶をすると、いきなり切なくなって涙が出そうになりました。
(まあ、これが今生の別れって訳じゃないし。また時間作って遊びに来るしね)
また会いに来ようと決意しつつ、レンタカーの返却時間が迫っていることに気付いて慌てて帰路に着いた一行でした。

宿の予約にシーワールドのチケットに、全てを手配してくれた妹に最大の感謝を捧げつつ、「長野の家に帰り着くまでが遠足だから!」と言って、妹ともしばしの別れ。次に会う時は、姪っ子が更におませに育っているかな?

久しぶりの一泊二日の家族旅行、満喫しました。
ありがとうございました。

(了)