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化粧療法

心理:化粧を用いたかかわり…利点と注意点

化粧を用いたかかわり…利点

 化粧を用いたかかわりは、なぜ良いのでしょうか。

1.五感の刺激
 化粧をすることは、指先を細かく動かすだけでなく、視覚(鏡の中で変化する自分やきれいな色を見る)、聴覚(パフを叩く音や化粧水の瓶を振る音を聞く)、触角(ブラシの感触や心地よいマッサージを体感する)、嗅覚(化粧品の良い香りを嗅ぐ)など、味覚以外のあらゆる感覚を使うため、脳の活性化に役立ちます。

2.コミュニケーションの促進
 化粧を用いてかかわることで「すてきね〜」などと、施術者や施設職員、他の入居者と高齢者の間にポジティブなコミュニケーションが生まれます。人は、他者に認められることで自尊感情が上昇する(自分を大切に思う心が育まれる)ので、その良いきっかけになります。

3.心の機能の調整
 現在の高齢者にとって、化粧は大人の証でした。その化粧を通して生き生きとした自分を思い出すことや、他者と闊達にコミュニケーションすることは、心の機能を活性化します。そうであるからこそ、単に気分が上昇するだけではなく、気分が落ち着いて問題行動が減る(例:徘徊が減るなど)のです。

4.プログラムとして実施する際のメリット
 基本的に安全で楽しいプログラムですし、一人でも、グループでも、実施することができます。また、受動的に始められて(最初は人にやってもらう)、日々の習慣に取り込んでゆくこともできます。


化粧を用いたかかわり…注意点

鏡像認知

 このようにさまざまな良い点をもち、長期入院高齢者の血中の免疫物質を増加させたという研究報告まである化粧療法にも、適応の限界があります。
 それは、対象者が、鏡像認知が可能かどうか、つまり、鏡の中で変化しているのは自分だという意識があるかどうかが一つの基準になります。それが分からない方にとって、化粧は迷惑であるばかりか、脅威にもなります。
 そのような方には、ハンドマッサージやネイルなど、実際に目に見えるもので体感できる手段がお勧めです。また、心身に疾患をもたれている方の場合、医師や施設職員の方の許可を得て実施してください。

 以上のような高齢者に対するものと異なり、うつ病や統合失調症、摂食障害などの患者さんに対して、あたかも精神科治療の一環として、化粧療法が行われることもあります。このような場合は、化粧を用いたかかわりが、翌日以降に精神症状を悪化させる危険もあるため、医師や心理士と一緒に、その指導のもとに行われなければなりません。

筆者プロフィール:野澤 桂子 氏
 山野美容芸術短期大学 美容福祉学科 准教授
 心理学博士 臨床心理士

専門テーマ:外見と心理、医療・福祉における美容ケアと心理